入院から在宅療養を選ぶとき

 自宅療養の重要性や、自宅で過ごすことでの患者さんの幸福に焦点が当たってきた昨今。

病院での退院調整の方向性も、自宅生活が当然であり正義のことのように進められることがあるのは想像に難くないのではないでしょうか。

 私自身も病棟看護師として勤務していた時には、どうやったら患者が自宅生活可能になるかと、入院患者さんの担当になるたびにまず考えを巡らせていたことを思い出します。


 しかし、結論をまず申しますと

 療養場所を決定する(してもらう)こと

は、例え多くの患者さんを自宅へ送り出した経験がある看護師でさえすぐにわかることでも、決まることでも、ましてやできるようにコーディネートできると考えることは過信であったということです。


 退院調整には3段階あるといわれています。

1段階 スクリーニングとアセスメント
2段階 受容支援と自立支援
3段階 サービス調整

 今日の病院では、1段階と3段階はシステマティックに調整が行われるようになっていると私は感じています。入院時からスクリーニングシートを作成することが看護業務のルーティーンとされていますし、3段階は退院調整における花形の退院調整看護師やMSWが介入し退院カンファや行われたり、家族の技術指導などが行われたりします。


 しかし、2段階の受容支援と自立支援が一朝一夕の介入や連携だけでは双方(医療スタッフと患者・家族)のイメージすらできないことに訪問看護師になって患者さんの療養生活を看ることを通して気づかされました。


 私自身も病棟で退院調整係として病棟看護師へ勉強会を開いたことがありましたが、ここ(2段階)はケースワークをしても『患者さんと家族の思いを聞く』で済ませて、【自宅生活のキーワード】の片鱗を見つけたら自宅への退院の道筋をまるで美しいストーリーの様に道順を示してしまっていたことを振り返ります。


 受容ができていないと、自宅に帰ってからが大変!ということを訪問看護師をしていて体験することができましたので、実体験ではないのですがケースとして紹介します。


 ケース1:介護が24時間だと患者さんが帰ってから知ってしまった家族

 いつ終わるのか分からない介護。サービスを利用しても同居家族には見えない責任がのしかかります。食事準備と食事介助。排泄関係(ここは病院で想像しやすく指導されます)。転落防止や俳諧予防などの安全管理。サービス提供者で助けてくれるはずのヘルパーさんを迎える準備があるなんて知らなかった。など。

 介護保険を利用するにも、役所への手続きやかかりつけ医に意見書をもらわないといけなかったり、認定書類を保存してサービス事業者に提示しないといけないことがあることはやってみないと知ることができません。それに耐えうる主介護者であるかということを自問自答してもらうことも、介護者になることへの受容支援であると思います。


ケース2:親の病気を受容することは年齢に関係なく難しいということ

 お食い初めで始まり、口から食事がとれなくなった人に訪れる【お食い締め】という言葉があるのをご存知でしょうか。嚥下機能が低下し、唾液すらもムセることが多くなり吸引処置が必要になった90代患者さん。その技術指導が患者娘にされて習得し、ミキサー食を提供するように指導されて帰宅。

 しかし、数日後にはとろみのない食事で誤嚥し発熱、肺炎発症。というのは医療者であれば想像に難しくないエピソードです。しかも吸引は機械が届いておらず退院してから一度もやっていなかったなんてことも。さらには利用サービスに訪問看護があったとしても24時間対応という自宅でナースコールのようなサービスがあるのですが、有料のため契約せず救急車を呼んで病院にトンボ返りしてしまい看護師の役割を果たせずに悔しい思いをしたことがあります。


 以上2つのケースを見て、どうすればいいのか。自宅に帰らないと分からない。そのときにならないと緊張感や介護者の生活の息苦しさなど感じることができません。


 私は、

ステップ2の受容支援が難しい。


 ということが病棟看護師や患者本人とその家族に伝えることが重要なのではないかと今は思います。生活リズムや価値観が変わることだってあることも想定に入れれば、ACP(アドバンス・ケア・プランニング)に代表されるように患者やその家族に専門職の相談相手がいて、状況や心情が変化することに寄り添える人が必要であり提供されることをお伝えしてあげたいですね。

 また、ステップ3に進む前の心の準備であり、自問自答を患者だけでなく家族とそれをサポートする病棟チーム、在宅チームがアセスメントと評価と信頼関係の構築を含むことまでがまさにステップ2であるとも考えます。


 病棟看護師と、在宅療養を支える介護士・看護師・セラピストの連携が
よいハーモニーを奏でますように。

なないろ訪問看護ステーション

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